「健康スポーツ医学」


 近年、スポーツをする人口が非常に増加し、国民総スポーツの時代ともいわれています。その背景には、国民が自らの健康の維持・増進とともに、生活習慣病の予防や治療のためにスポーツを生活の中に積極的に取り入れているという状況があります。

 日本医師会〈日本の医師の団体〉もスポーツを通して健康社会の実現をめざしています。そのためのコーディネーターともいえる認定健康スポーツ医〈スポーツ医学についての研修を終了した医師に与えられる資格〉が現在約13,000人、川西市医師会にも23人います。

 ところが、スポーツは諸刃の剣でやりようによってはクスリ(メリット)になり、リスク(デメリット)にもなります。健康の維持・増進や生活習慣病の予防・治療はクスリに相当し、スポーツ傷害や突然死などはリスクに相当します。なかでもスポーツによる突然死は各年代を通じて、心臓血管系に死因を認めるものが最も多く、年間100人を超えるとされています。その予防のためには、負荷心電図(例えば階段を上り降りして心臓に負荷をかけて心電図を撮ること)などの内科的メディカルチェックが必要です。

 さらに、夏場(7月下旬〜8月上旬)には熱中症にも注意する必要があります。スポーツによる熱中症事故は、適切な予防処置さえ講ずれば防げるものです。

 一方、スポーツ整形外科の近年の進歩は著しく、スポーツ傷害(外傷・障害)の予防と治療に成果をあげています。成長期には遊び→スポーツを通して健全な心身の発育をはかりましょう。そのためにはいろんなスポーツをうまく組み合わせ、全身的にバランスのよい発育を促すことが大切です。長時間の練習( over use )や非科学的、不適切なトレーニング( misuse )は傷害のもと。成長期の身体的特徴として、身長が伸びる際、骨も長軸方向に伸びます。これに対して、筋肉の長軸方向への発育は骨の後を追う形となり、筋肉のひずみ(相対的な筋短縮)が生じます。整形外科的メディカルチェックにより、筋肉・腱のかたさや関節のやわらかさ、さらに変形(O脚、X脚、扁平足など)について調べ、ストレッチ体操や筋力アップ、種々のサポーターや足底板の使用などを勧めることも必要です。さらに、over use によるスポーツ障害を予防するためにも、練習時間の規制が必要で、週に1〜2日の休養をとること、そのためにもスポーツ医と親・指導者・先生との連絡が大切です。予防に勝る治療はありません!!

 中高年において、スポーツは身体的にも精神的にも有用であり、健康の維持・増進や生活習慣病の予防・治療に効果的であるが、十分なメディカルチェックなしに運動することは危険です。特に、中高年者では 1)筋力の低下 2)柔軟性の低下 3)骨関節の老化 4)血流の低下 などが見られ、捻挫・肉ばなれ・腱断裂・骨折などのスポーツ外傷や、腰・膝・肩・肘の痛みなどのスポーツ障害が見られます。

 骨関節への影響の面からは強度が低い運動でも十分な効果が認められており、その継続と頻度が今後の課題です。

 スポーツをする時、一番大切なことは楽しむこと、スポーツを始める前の準備運動(ウォームアップ)と終わったあとの整理運動(クールダウン)を忘れないで下さい。スポーツによる疲れは残さないように、「だるい」「重い」「痛い」などのシグナルを見逃さないように。スポーツの能力には個人差があり、自分に合った種目(複数)と運動量(回数と時間)を自分のペースで楽しみ、それを続けることも大切です。もし、スポーツ傷害が発生したら、初期治療としてはRICEを実施し、すみやかに診療所(整形外科)や病院を受診して下さい。

(文責 吉岡康裕)


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